昼食を食べ終えると、決まって眠くなる。食べ方を変えても変わらず、休日はそれほどでもない——。そのような場合、食事より睡眠不足が影響している可能性があります。
注: 本記事の情報は参考情報であり、医学的診断ではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
食後の眠気にはいくつかのタイプがあります。全体像は食後に異常に眠い、これって病気?|原因5タイプ別セルフチェックと対策にまとめています。5タイプのセルフチェックはこちらから行えます。この記事では、5つ目の「睡眠負債の蓄積」を掘り下げます。
午後の眠気は、昼食を食べなくても起こる
午後の早い時間に眠気が強まる現象は「post-lunch dip(食後の眠気の谷)」と呼ばれます。総説によると、これは昼食を食べなくても起こる現象で、一日のなかで眠りやすさが高まる時間帯に対応しており、体内リズムに根ざしています。高糖質の昼食で悪化はしますが、食事だけが原因ではありません(文献1)。
眠気の谷は、前夜の睡眠が乱れると強まるとも言われます。2時間の単調な運転実験の論文では、著者らが午後の眠気の谷を「昼食とはほぼ無関係で、前夜の睡眠の乱れで悪化する現象」と整理しています(文献2)。
睡眠不足が積み重なると何が起きるか
健康な成人(実験全体で48人)を対象にした研究では、睡眠時間を1晩あたり6時間または4時間に14日間制限すると、すべての認知課題で成績が累積的に、睡眠時間に応じて低下しました。一方、主観的な眠気の評価は、制限の初期に上がったあとは、日を追ってもわずかしか増えず、6時間と4時間の条件を有意には区別できませんでした(文献3)。
つまり、睡眠が足りない状態が続くと、本人の眠気の自覚が頭打ちになったあとも、パフォーマンスの低下が進む可能性があります。「慣れた」という感覚は、睡眠が足りている目安にはならないと考えられます。
睡眠不足は血糖の処理にも影響します。若い男性11人で、1晩4時間の睡眠を6晩続けた条件は、十分に休んだ条件より、糖の処理能力(耐糖能)が低下していたと報告されています(文献4)。いずれも研究室で睡眠時間を管理した短期間の実験で、日常の生活とは条件が異なります。
週末に長く寝れば返せるのか
5晩続けて睡眠を4時間に制限したあと、1晩だけ寝床に最長10時間いられるようにした実験があります(159人)。回復のために寝る時間が長いほど課題の成績や眠気は戻りましたが、10時間でも、注意力の課題、眠気、疲労感は完全には元に戻りませんでした(文献7)。
休日に眠気が軽いのは何を意味するのか
夜型の人は、平日と休日で睡眠のタイミングの差が大きく、平日に睡眠不足がたまり休日に補う傾向があると報告されています。この平日と休日のずれは「社会的時差ぼけ」と呼ばれます(文献8)。調査は501人への質問票によるもので、因果関係までは示せません。休日に眠気が軽いことは、平日の睡眠不足を疑う手がかりのひとつです。
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食事と睡眠不足が重なるとき
睡眠を5時間に制限した若い男性12人に2時間の運転をさせた実験では、305kcalの昼食より922kcalの昼食のほうが、眠気に関連した車線のはみ出しとEEGの眠気の指標が増えました。差は運転開始30分以降に出ています(文献2)。睡眠不足のときは、昼食の量が眠気に影響しやすい可能性があります。ただし対象が12人の若い男性のため、一般化はできません。
まとめると、午後の眠気は、体内リズム、前夜までの睡眠、昼食の量が重なって強まると考えられます。ただし、それぞれがどの程度関わるかは人によって異なり、紹介した文献から割合を示すことはできません。
他のタイプとの見分け方
次のような特徴があれば、睡眠の影響が大きいと考えられます。
- 平日だけ眠く、休日はあまり眠くない
- 軽い食事の日でも、毎日ほぼ同じ時間帯に眠くなる
- 食後に限らず、会議中や移動中にも眠くなる
- 夜更かしや早起きをした翌日に、午後の眠気が強まる(睡眠を5時間に制限した条件で眠気が強まった実験があります。文献2)
日中の眠気の程度は、Epworth眠気尺度(8つの場面で眠ってしまう可能性を自己評価する質問票)で測ることができます。この尺度は、健康な人30人と睡眠障害の患者150人を比べた研究で、睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの患者と健康な人を区別できたと報告されています。いびきだけの人の得点は、健康な人と差がありませんでした(文献5)。
十分な睡眠時間をとっていても眠気が続く場合は、睡眠の質に問題があるかもしれません。睡眠時無呼吸症候群のサインも確認してください。血圧や血糖の影響は、食後低血圧と眠気や食後の眠気は血糖値のせい?で扱っています。
日常でできること
- 睡眠時間を確保する: 睡眠不足の影響は日数とともに積み重なることが示されています(文献3)。睡眠負債の考え方は睡眠負債は返せない、習慣は睡眠の質を上げる5つの習慣を参照してください。
- 午後は短い仮眠を試す: 睡眠を約5時間に制限した若く健康な24人で、午後3時に5・10・20・30分の仮眠を比べた実験では、10分の仮眠で眠気や疲労感、認知成績が直後から良くなり、その一部は最長155分続いたと報告されています。30分では目覚めた直後に一時的に覚醒度が下がりました(文献6)。この実験は睡眠を制限した人が対象で、仮眠が夜の睡眠の代わりになるかは、この実験からは分かりません。
- 睡眠不足の日は昼食を重くしない: 食事量の影響が出やすい可能性があります(文献2)。
受診を考える目安
次の場合は、内科や睡眠外来への相談を検討してください。
- 十分に寝ているのに、日中の強い眠気が3ヶ月以上続く
- いびきや寝ている間の呼吸停止を指摘された
- 運転中や会議中に、意図せず眠ってしまう
睡眠時間と食後の眠気の出方を記録すると、傾向が見えやすくなります。「就寝0時・起床6時、昼食後13:30から眠い」のように、前夜の睡眠時間と眠くなった時刻を並べておくと、平日と休日の違いも比べやすくなります。megulus は睡眠データと食事記録を並べて見られるため、「睡眠が短い日に食後の眠気が強いか」を自分のデータで確かめる助けになります。
参考文献
- Monk TH (2005) "The post-lunch dip in performance." Clinics in Sports Medicine, 24(2), e15–e23. DOI / PubMed
- Reyner LA et al. (2012) "'Post-lunch' sleepiness during prolonged, monotonous driving - effects of meal size." Physiology & Behavior, 105(4), 1088–1091. DOI / PubMed
- Van Dongen HPA et al. (2003) "The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation." Sleep, 26(2), 117–126. DOI / PubMed
- Spiegel K et al. (1999) "Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function." The Lancet, 354(9188), 1435–1439. DOI / PubMed
- Johns MW (1991) "A new method for measuring daytime sleepiness: the Epworth sleepiness scale." Sleep, 14(6), 540–545. DOI / PubMed
- Brooks A & Lack L (2006) "A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: which nap duration is most recuperative?" Sleep, 29(6), 831–840. DOI / PubMed
- Banks S et al. (2010) "Neurobehavioral dynamics following chronic sleep restriction: dose-response effects of one night for recovery." Sleep, 33(8), 1013–1026. DOI / PubMed
- Wittmann M et al. (2006) "Social jetlag: misalignment of biological and social time." Chronobiology International, 23(1–2), 497–509. DOI / PubMed
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